天の川銀河をさまよう恒星の「幽霊」、ハッブル望遠鏡が発見

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天の川銀河を漂うブラックホールのイメージ図/Digitized Sky Survey/Hubble/ESA

天の川銀河を漂うブラックホールのイメージ図/Digitized Sky Survey/Hubble/ESA

(CNN) ハッブル宇宙望遠鏡が天の川銀河を単独で漂う恒星の残骸を初めて検出した。かつて輝きを放っていた恒星は、目に見えない幽霊のような残骸となって宇宙空間をさまよっていた。

太陽をはるかにしのぐ大質量の恒星が死ぬと、超新星爆発を起こし、残った核は自らの重力で押しつぶされてブラックホールを形成する。

時に、この爆発によってブラックホールが動き出し、ピンボールのように宇宙空間を高速で移動することがある。本来なら、多数のさまようブラックホールが科学者に知られているはずだが、これらは実質的に見ることができないため発見が非常に難しい。

天文学者の見方によれば、私たちの銀河には1億個もの浮遊するブラックホールがさまよっているという。

研究チームは今回、こうした天体のひとつを検出したと考えている。6年間にわたる観測の成果で、天体の正確な質量を測定することにも成功した。

ブラックホールとみられる天体は地球から5000光年の距離にあり、「いて・りゅうこつ腕」と呼ばれる渦状腕の中に位置する。

だが、ブラックホールが宇宙空間の空虚な穴と本質的に区別できないのだとすれば、ハッブルはどのようにして今回の天体を発見したのだろうか。

ブラックホールの極めて強力な重力場は周囲の空間をゆがめ、背後の星の光を偏向・増幅させる条件をつくり出す。この現象は「重力レンズ効果」と呼ばれる。地上の望遠鏡で天の川銀河に散らばる膨大な恒星を観測し、こうした一時的な増光がないか探索する。増光が見つかれば、巨大な天体が私たちと恒星の間を横切ったことを意味する。

ハッブルはこうした観測結果をベースに追跡調査を行うのに最適な機器となる。今回は2つの異なる研究チームが天体の質量を決定するために観測結果を調べ、どちらの研究も米天体物理学誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に受理された。

1チーム目は米ボルティモアにある宇宙望遠鏡科学研究所の天文学者カイラシュ・サフ氏が率いるチームで、このブラックホールの質量を太陽の7倍と算定した。

2チーム目はカリフォルニア大学バークレー校の博士課程の学生ケイシー・ラム氏とジェシカ・ルー准教授(天文学)が率い、太陽の1.6倍~4.4倍というより小さな範囲の質量を導き出した。この推計によると、問題の天体はブラックホールである可能性も、中性子星である可能性もある。中性子星とは、爆発した恒星の非常に高密度な残骸を指す。

ラム氏は声明で「正体が何であれ、暗い恒星の残骸が他の恒星を伴わずに天の川銀河をさまよっているのが見つかった例は初めてだ」と指摘している。

このブラックホールは地球から銀河の中心に向かって1万9000光年の位置にある恒星の前を横切り、270日にわたってその光を増幅させた。ブラックホールの背後で輝く恒星のすぐそばに他にも明るい恒星があるため、測定値の判断には苦労したという。

サフ氏のチームは、問題の天体が時速約16万キロで移動している可能性があると推測。これは天の川銀河の同じ部分にある大半の恒星よりも早いスピードとなる。一方、ルー氏とラム氏のチームの計算では推計時速は10万8000キロにとどまる。

ハッブル望遠鏡からさらなるデータや観測結果が届き、より一層の分析を行えば、この天体の正体をめぐる議論に決着がつく可能性もある。星がどのように進化して死んでいくのかを理解する手がかりとするため、天文学者らは引き続き気の遠くなるような調査を行って、他にもこうした目に見えない奇妙な天体がないか探している。

「マイクロレンズ効果を利用すれば、こうした単独で漂う小さな天体を調べ、その質量を測ることができる。他の方法では見ることができない暗い天体の解明に向け、新しい窓が開けたと思う」(ルー氏)

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