絶滅危惧種タイセイヨウセミクジラ、過去20年近くで最少の個体数に

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米マサチューセッツ州の沖合を並んで泳ぐタイセイヨウセミクジラの母子/Boston Globe/Boston Globe/Getty Images/FILE

米マサチューセッツ州の沖合を並んで泳ぐタイセイヨウセミクジラの母子/Boston Globe/Boston Globe/Getty Images/FILE

(CNN) 世界で最も希少な海洋哺乳類のひとつ、タイセイヨウセミクジラの個体数が昨年1年間で8%減少したことがわかった。研究者らは種の存続にとって深く懸念すべき状況だと指摘している。

「タイセイヨウセミクジラ・コンソーシアム」の25日の発表によると、このクジラの個体数は2020年に336頭まで減少した。これは過去20年近くで最も少ない数だという。

非営利海洋保護団体オセアナの幹部、ウィットニー・ウェバー氏は声明で「タイセイヨウセミクジラの個体数や死亡率に関する新たな推計は憂慮すべきものだ」と指摘。「1年のうちに絶滅危惧種を10%近く失うのは大変なことであり、状況がかつてなく深刻かつ切迫している警鐘と受け止めるべきだ」と述べた。

米海洋大気局(NOAA)によると、タイセイヨウセミクジラは世界で最も絶滅が危惧される大型クジラのひとつ。「絶滅の危機に瀕(ひん)する種の保存に関する法律」に基づき、1970年から絶滅危惧種に分類されている。

同コンソーシアムによると、ここ10年は個体数が減少傾向にあり、減少幅は30%に達する。2011年の時点での個体数は推定481頭と、近年最多の水準にあった。

セミクジラにとって主な脅威となるのは、船との衝突や漁具に絡まる事故を含む人間との接触だ。

同コンソーシアムの幹部、スコット・クラウス氏は声明で「人間の活動がこの種を絶滅に追い込んでいることに疑問の余地はない」と述べる一方、「タイセイヨウセミクジラが非常に回復力に優れた種であることにも疑いの余地はない。セミクジラの保護活動にかかわる人は誰1人、この状況から回復できないとは思っていない」として個体数の回復に期待を示した。

オセアナによると、タイセイヨウセミクジラの個体数が最初に減少した原因は乱獲で、1935年に捕獲が禁止される前のことだった。1920年代までにはおそらく、ピーク時の推計2万1000頭から100頭以下に減少していたという。

人間との接触は今も個体数減少の要因になっている。

ニューイングランド水族館アンダーソンキャボット海洋生物センターの研究者で、同コンソーシアムの幹部ヘザー・ペティス氏は「これらのクジラを現在の窮地に追い込んでいるのは我々人間であり、我々にはクジラたちを救う能力がある」と話す。

減少するメスの個体数

個体数の回復には11月中旬から4月中旬まで続く繁殖期が極めて重要となる。現在残るメスは100頭以下に過ぎない。

オセアナによると、セミクジラが生殖的に成熟するのは約10歳以降。通常は3~5年ごとに1年の妊娠期間を経て1頭のみを出産する。ところがNOAAは、現在はメスの出産間隔が平均6~10年ごとに延びていることに気づいた。

NOAAによると、生物学者の見方ではメスの出産が少なくなっている理由のひとつは、漁具などが絡みつくことでクジラのストレスが増しているためだという。

同コンソーシアムによると、2021年、科学者らは母親と子どものペアを18組追跡した。これは楽観材料だが、過去10年の平均だった年間23組と比べると大幅に少ない。

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