火星の湖消失前に何が起きていたか、探査車の画像が明かす 新研究
露出した岩層の最上部の層には、大型の岩が複数存在する。大きなものは直径1メートルで、数トンの重さがあるとみられる。堆積した層の最上部にあるのを考慮すれば、これらの岩は元々はクレーターの外から来たに違いない。科学者らはクレーターの縁の基岩だった岩か、そうでなければ湖の40マイル(約64キロ)以上上流から運ばれてきたものだとみている。
1秒間に9メートルの速さで流れる鉄砲水なら、これらの岩を運んでこれた可能性がある。
論文著者でマサチューセッツ工科大学(MIT)の惑星科学教授を務めるベンジャミン・ウェイス氏によると、そうした鉄砲水は特別な事象で、現地の水文学やあるいは火星における地域気候に根本的な変化が起きたことを示唆する可能性もあるという。
巨大な石が何層もの薄い傾いた堆積層の上に存在するということは、湖がもともとはほぼ静かな状態だったこと、そして干上がる前に鉄砲水に襲われていたことも示す。数十億年の時を費やして、干上がった湖底とデルタ地帯は風に浸食されていった。
同氏は、ジェゼロ・クレーターが地球同様に生物の居住が可能だった環境から現在の荒涼とした地形へと変化した点に言及。露出部分の岩石から、こうした変化の過程をたどれる可能性があると述べた。火星でそのような場所はほかに見つかっていないという。
温暖湿潤だった火星の気候が寒冷乾燥へと変化した理由は、依然として明らかになっていない。