地球上の秘境

>>「旅をするな、探検せよ」 探検家が語る地球の未開地

ロビン・ハンベリーテニソン博士は、1950年代から全大陸で30以上の探検を指揮した。博士は、世界で初めて南米の最も幅の広い部分を横断し、現地の人たちとカラハリ砂漠を歩き、ホバークラフトでアマゾンを探検した。 これまでハンベリーテニソン博士の探検を題材にした映画が11本制作され、博士自身の探検に関する著作も20冊に及ぶ。博士は探検家志望者が是非訪れるべき場所として、9カ所を挙げる。
Congo Rainforest
ミャンマー北部
カムチャツカ半島(ロシア)
ボストーク湖(南極大陸)
ムル(ボルネオ島)
グレート・バリア・リーフ(オーストラリア)
中米
マリアナ海溝
アマゾンの熱帯雨林
Design: Jason Kwok/CNN
Courtesy Costa Rica Tourism Board
中米には、熱帯雨林や野生生物から古代文明の遺跡まで、探検の対象は多岐にわたる。この地域の冒険は、その内容によって危険にも単調にもなる。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「パナマやコスタリカのモンテヴェルデ・クラウド・フォレストなど、中米全体を探検することをお勧めする。現地には優れた熱帯雨林の研究所が数多くあり、そこで楽しく、安全に研究に取り組める。もし遺跡に興味があるなら、中米には滅亡した都市や遺跡が無数に存在する。特にグアテマラは、まだ発見されていないマヤ寺院の宝庫だ」
Courtesy Sarawak Tourism Board
ガンアング・ムル国立公園―ユネスコの世界遺産に登録されている同国立公園には、世界最大の洞窟や、老齢樹の熱帯雨林がある。洞窟の探検はツアーで行くのが簡単だが、中には探検が困難な上級者向けの洞窟もある。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「1970年代に、私は英国の王立地理学会がこれまでに組織した最大の探検隊を指揮し、総勢130人の科学者らを引き連れ、15カ月間、熱帯雨林を探検した。この探検で、われわれは2万4000の新種を発見し、熱帯雨林の暗号を解読した。最近、熱帯雨林が次々と破壊されているため、現在ムルは隔絶された国立公園・島だが、かつてこの地にはバッファー・ゾーン(緩衝地帯)があり、大きな生態系の一部だった。しかし、ここは今も研究に値する素晴らしい場所だ。またムルには世界最大のケーブ(洞窟)システム「サラワクチャンバー」がある。私の探検隊が、私の帰宅後にこの洞窟を発見した。サラワクチャンバーは山の内部5キロの場所にある。そのため隊員たちは、彼らの頭ほどの高さの硬い岩が約1.5キロにわたって続く狭い場所を少しずつ進んで行かなくてはならなかった。少しでも動くと、押しつぶされてしまう。まさに胸躍る体験だ」
ムル(ボルネオ島)
Courtesy Visit Brazil/Embratur
アマゾニアとも呼ばれるこの地域は、世界最大の天然資源の1つだ。この地域の森が二酸化炭素を酸素へと変えており、世界の酸素の約2割をこのアマゾンの熱帯雨林が供給している。そして科学的研究の新たな領域の1つが、熱帯雨林の林冠(キャノピー)だ。科学者らはこの林冠に世界の種の半数が生息している可能性があると考えている。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「私は、膨大な時間をかけてアマゾンのさまざまな場所を探検してきた。そして、これまでの人生の中で、アマゾンの多くの部分が消えていくのを目の当たりにした。アマゾンには優れた研究所が多数あり、研究を行うには最適な場所だ」
アマゾンの熱帯雨林
グレート・バリア・リーフ(オーストラリア)
グレート・バリア・リーフは、オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁であり、400種のサンゴ、1500種以上の魚、4000種の軟体動物が生息する。またグレート・バリア・リーフ内には、2500の礁と900以上の島が存在する。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「ある意味、グレート・バリア・リーフはあまり探検されていない場所だ。現地の研究所に行って、調査・研究を行うことをお勧めする。各研究所は常に新種を発見している。最近、汚染や海洋温度の上昇により、サンゴ礁が死滅しており、現地での調査は急務だ。危険はないが、ダイビングをするには潜水指導員協会(PADI)の認定書が必要」
Courtesy Gary Bell/Tourism-and-Events-Queensland
Vasily Suvorov/AFP/Getty Images
カムチャツカ半島(ロシア)
長さが約1000キロに及ぶカムチャツカ半島には、200を超える火山(その多くが活火山)と厚い永久凍土層があり、「火と氷の地」と呼ばれる。この地域は、ロシアで最も熊の多い場所であり、川には多くの魚が生息する。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「シベリアの大部分は、森以外何もないツンドラ地帯で、非常に退屈だが、カムチャツカは刺激的な場所だ。シベリアの沿岸部には、ブラジルよりも多くの先住民が暮らしている。彼らは共産主義の下で、ブラジルの先住民らと同様の問題に悩まされた。驚くことに、カムチャツカはイギリス諸島と同じ緯度に位置する。しかし、ここにはガルフストリーム(湾流)がない。ここが永久凍土層なのはそのためだ。地表を1フィート掘ると、固い氷が現れる。
Courtesy Htoi Awng Htingnan
北部三角地帯の温帯林は、世界で最も調査が進んでおらず、科学的に知られていない場所の1つだ。この地域は辺ぴな場所にあり、またミャンマーの政情が緊迫していたことから、最小限の科学調査しか行われてこなかった。しかし、この地域は多種多様な生物の生息地として知られる。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「ここは、ミャンマーの政情、戦争、地域的に到達が困難であることなどの理由から訪れた者が少ないため、今も手付かずの状態で残されているより刺激的な探検エリアの1つだ。ミャンマー北部には、1920年代以降、誰も足を踏み入れていない素晴らしい熱帯雨林がある。このエリアは過去60年間、紛争地域だったが、ある意味、そのおかげで自然が守られてきた。しかし、今ミャンマー政府は、中国からこの地域を開拓し、ガスパイプラインを敷設するよう圧力をかけられている。よって、この地域の調査は緊急を要するが、同時にこの地域は興味をそそる場所でもある。今、科学者らは、何者かがここにブルドーザーでやってきて、すべてを破壊し尽くす前に、この場所を訪れ、全容を把握しようとしのぎを削っている」
コンゴ熱帯雨林は世界で2番目に大きな熱帯雨林であり、6カ国(カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、ガボン)にまたがる。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「この地域では激しい紛争が続いている。誘拐、殺人、強姦などの凶悪事件が多発する大変危険な場所だ。しかし、だからこそ、最も興味深い場所でもある」
コンゴ熱帯雨林
Courtesy Lango Camp Wilderness Safaris
Asahi Shimbun Premium via Getty Images
南極大陸の奥底には複雑に入り組んだ水系が存在する。ボストーク湖は、1990年代にロシア人が最初にその存在を確認し、英国人によって地図が作成された。1万5000平方キロの面積を誇るこの湖は、数千万年もの間、氷床下約4キロに隠されていた。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「この地底湖は、2500万年もの間、外界から隔絶されていた。湖は暗く、冷たく、氷で覆われているが、そこには生命が存在する。まさに驚くべき場所だ。ボストーク湖の探索に参加したい人は、自ら費用を負担し、研究所で役立つ存在になる覚悟があれば、興奮に満ちたボストーク湖内の探索に参加できるだろう。ただ、氷上でじっとしているのは、極めて退屈で、つらく、寒く、厄介な仕事だ」
マリアナ海溝
Courtesy NOAA Submarine Ring of Fire 2006
太平洋西部に位置するマリアナ海溝は、世界で最も深い海溝であり、太平洋プレートとマリアナプレートの2つの構造プレートの境界をなしている。 ロビン・ハンベリーテニソン博士「この海溝は深さが約10キロあり、想像を絶するほど冷たく、暗い場所だ。1960年に複数の探検家が潜水艇で海溝に潜り、隔絶された温泉で体長約6メートルのワーム、貝、未確認生物を発見した。海溝深部には日光が届かないため、これらの生命体は化学合成から進化した。我々は、海底の小さな噴気孔や温泉の周辺で最新技術を使ったさらなる生命体の探索を開始する」